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2011年7月30日土曜日

成瀬巳喜男演出『白い野獣』、敗戦後占領軍要請の公娼制度、韓国で「化学的去勢」

@@@@やまねこ通信116@@@@

  18回 茅野市男女共同参画講座が茅野市男女共同参画を進める
会主催で開かれます。本日、12時半開会です。

成瀬巳喜男演出『白い野獣』昭和25年(1950年)東宝映画(92分)
について考えるセミナー
時:本日午後12時半~16時半
所:諏訪東京理科大学、4号館、432室

多くの皆様にはご連絡をお送りしています。
まえがき:
女性をモノとして商品化する性産業・売春。今日の視角は、「援助
交際・自己決定論」に代表されるかに見える。けれど今なお女性だ
けに要求される「貞節」や道徳、それに差別の根深さは無視できな
いものがある。敗戦後占領軍対策のため政府は性産業を再興。そこ
に貧困層の女性が多数吸収され、その数50万人に達した。映画『白
い野獣』は売春防止法以前の婦人更生施設が舞台。家族映画の多い
成瀬巳喜男としては異色の初期作品。全寮制の施設で職業訓練に励
む女たちは、自尊感情が持てぬまま病気の恐怖と闘い、婚約者が復
員しても自己を差別視して苦しむ。

物語のあらすじは次の通りです。
売春女性たちの更生施設「白百合寮」が舞台。所長は所員とともに
女性たちの「更生」に情熱を傾けている。国立病院から紹介されて
きた女性の中原医師も所長に協力。メガネを掛けた小柄な高田女史
も協力者。この中、事務室主事の吉村だけは汚れた存在。
白百合寮では、戦時中に従軍慰安婦を務め、梅毒に感染した増田玉
江ら、志に反して売春の道に入った女性たちが職業訓練に励んでい
る。大野えい子は両親を空襲で失い絶望の末、僅かな金のために身
体を売り梅毒に感染していた。現在はミシンを踏んで将来の自立を
目指している。

一方新入り湯川恵子は「人生を楽しむために身体を売った」ことを
公言。寮の「暴れん坊」。所長、中原医師の関心を惹く努力。古株
の女たちの反感を買う。増田玉江は梅毒が脳に達して、脳炎の発作
に苦しみ軍隊の隊長の名を叫びながら病院で死ぬ。三好秀子はその
最期を親切に看病。すべての女たちは潜伏期の梅毒が執拗に再発す
ることを恐れ、発狂、死の恐怖におののいている。湯川と共に新入
りの幼い佐山マリは、妊娠3カ月だった。入所して7カ月後に佐山
は父の不明な男の赤ん坊を生んだ。女たちはそれを大歓迎する。更
生施設での女たちの諍いを起こしながらも根強い連帯が細かに描か
れる、「死と再生」のドラマ。

こんなことにポイントを絞って考えてみよう。
1 「売春」という商売が、どうして生み出されるのか、この映画
では、語られているだろうか?
2 湯川恵子はどんな文化的背景を代表しているのだろう?  
それに中原医師は?
  
資料のタイトルはこんな具合です。

脳梅毒で狂死する元従軍慰安婦玉江と
進駐軍相手の赤線女性湯川 
「こんな女に誰がした?」
この責任主体は誰か?

ポイント1
・「買売春」は、女性を共同の所有物とする男性の側が女性を
分断するところから発生。奴隷制の残存。

・「家族制度」の中の女(妻)と外の女(娼婦)。
「清純な女」と「汚れた女」。
・男性社会が行う「女性の分断」を女性たちも内面化してゆく。

・父権制の家族制度とその都合によって、貧困と飢餓に苦しむ女
たちが、娼婦、従軍慰安婦にされた。

・公娼制度は近代以後国家の必要から生まれた。戦後の売春は占
領軍の要請で日本政府が対応した。
増田玉江は従軍慰安婦、湯川恵子は戦後の赤線。

・『白い野獣』は1950年の製作であるが、戦争直後1946年(訂正)後半の
時代が背景ではないかと推測可能。
   収容施設、ペニシリンの普及、キリスト教婦人嬌風会の活動。

 ポイント2 湯川恵子はどんな文化的背景を代表しているのだろ
  う?それに中原医師は?
 
戦後、占領軍の要請のもと、この国の公娼制度は次のように展開さ
れました。
1945年:818日「慰安施設」の指示。827RAA
194612月内務省「赤線」地帯を指定。推定55000人~7万人の女性
   が売春で働く。
キリスト教婦人嬌風会の廃娼運動(中原医師、救済活動に献
身的で「白鳥の湖」などクラシック音楽を普及)
19461月、GHQは民主化改革の一環として、日本政府に公娼制度(貸
   座敷・娼妓の廃止を要求)
1956年売春防止法制定
1958年売春防止法実施

ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて――第二次大戦後の日本人上下』
(岩波書店)(1999,2004)が、占領軍の要請に始まる内務省の売春
態勢づくりを精密に語っています。
RAAから赤線地帯の指定へ。全国の警察が業者を集めて実行しました。
銀座に大きな看板が出されました。
「戦後処理の国家的緊急施設の一端として、進駐軍の大事業に参加す
る新日本女性の率先協力を求む」
「女性事務員、年齢18歳以上25歳まで。宿舎、衣類、食糧支給」 
 貧しいみなりの裸足の女性たちが応募。「水商売」の経験無が多く、
仕事の中身を聞いて多くが去る。残った女たちは食事と宿舎より、
「お国のため」に自分の身体をささげることに魅力との動機。「愛国
的自己犠牲」

以上、概略をお伝えしました。


  次は韓国から「化学的去勢」のニュース

朝鮮日報 11.7.23
16歳未満の未成年者に性的暴行を加えた犯罪者に薬物を投与し、性的
衝動や性欲が生じないようにする「化学的去勢」が24日から導入され
る。韓国国会は昨年7月に「性暴力犯罪者の性衝動薬物治療に関する法
律」を制定し、1年後の同日から制度が施行されることになった。
 法務部の関係者は「化学的去勢の初の対象者は、年内に決まる。性
的倒錯の症状がある犯罪者が多く収監されている公州治療監護所から
対象者が出る可能性が高い」と説明した。韓国政府は化学的去勢の対
象者が年間約100人になるとみている。
 化学的去勢の対象者は、16歳未満の未成年者に性的暴力を加えた犯
罪者のうち、再犯の懸念が大きい性的倒錯が認められる患者だ。法務
部は今年5月、精神科、泌尿器科、内科などの医療専門家による「性
衝動薬物治療政策諮問団」を組織し、具体的な方策を検討してきた。
 薬物治療の対象となるのは裁判所の決定により化学的去勢命令を
受けた場合仮釈放条件を満たした者のうち、本人が薬物治療に同意
し、裁判所が治療命令を下した場合治療監護中に法務部の治療監護
審議委員会が薬物治療命令を下した場合などだ。
金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者

やまねこは考える。
こうした薬物で事情がどれほど改善するのだろう。何もしないよりは
した方が良いだろうけれど。

けれど、前IMF専務理事のストロスカーンのような男性にこの「治
療」は有効だろうか?
やまねこはそうは思わない。
ストロスカーンの眼には、世界は無数の女という名の性の奴隷が横た
わっているハーレムなのだ
「誰をつまみ食いしても構わないんだ!」

ローマ皇帝、古代中国の皇帝から志村けんのバカ殿にいたる無数の権
力者の男性のメンタリティーが深く構造化されている「エリート」君。

ユダヤ教徒ストロスカーン氏がローマ皇帝と同じとは!背後に潜むイ
エスの神話。ス氏が自身をまさか救世主とみなしているのではないだ
ろうな!ところで、何を救済するのよ!

うらおもて・やまねこでした。

2011年7月27日水曜日

信州の女たち、東電女子社員殺害事件、IMF理事強姦被害者潔白を主張

@@@@やまねこ通信115@@@@

一週間、投稿をお休みしました。

先週23日(金)午前、諏訪市の女性グループに招かれて講演をして
きました。意欲的な女性たちからなる諏訪女声ネットの会。
テレビの連続ドラマが終わったばかりの『下流の宴』について語り
ました。毎日新聞に連載された林真理子の小説が原作です。詳細に
いては、後日、お知らせします。

また翌日24日(土)は塩尻市の総合文化センターで「第三次男女共
同参画計画策定」の記念講演というのをしてきました。講演終了後、
市議を含む女性団体の皆さんと親しく交流することが出来ました。
塩尻では「女性会議」という組織を作り、しっかり市政に対して働
きかけ、継続的に勉強会を開いています。元気な女たちが健在であ
ことにやまねこは感動しました、やまほどの元気をもらって感謝
激です。


茅野でも見習うことが出来るかもしれない。こう思いながら、うっ
すら赤みがかった空を仰いで、夕暮れの塩嶺峠を下り、岡谷経由で
野に帰り着きました。

一週間、投稿を怠っている間に、気になる事件、ニュースが、幾つ
も伝えられています。

  東電女子社員殺害、犯人は別の男性の可能性
東電女子社員殺害の事件現場、渋谷区円山町の古アパートに、容疑
者ではない月の人物のものとおぼしき体毛が残されていたこと、被
害者の身体に遺された体液のDNAとその体毛が一致すること、ネ
パール人ゴビンダ容疑者のDNAとは違うことが判明したという。
弁護側はゴビンダ容疑者の釈放を請求している。

過去の捜査がなんと不徹底だったのだろう。聞いていて腹立たしい
ばかりである。佐野真一の『東電OL殺人事件』を読んでも、ゴビ
ンダ容疑者に対する証拠は怪しいものであったことが書かれていた。


  IMF専務理事強姦容疑。被害女性テレビで訴え。
世界経済の元締めIMF専務理事で、フランス社会党大統領候補で
もあったユダヤ系エリートのドミニク・ストロスカーンが、私用で
滞在中だったニューヨークの高級ホテルで、客室係西アフリカギニ
ア出身、シングルマザーの女性に対して強姦をはたらき逮捕された
ことを519日@@@やまねこ通信83号@@@でお伝えした。

その後、裁判では被害女性が「あるサービス」を常習的に行ってい
たことの主張が弁護側から出された。また、警察に訴えるまでに被
害者が再度、事件現場に掃除に行ったことなどが疑問視され、陪審
員の同意が取り付けにくいことを理由に、判事は容疑者の審理を延
期にしていた。(こう書いていたのはNYタイムズだけである。多
くの日本語メディアは、被害女性を売春婦と決めつけている)。

IMFでは後任に女性の専務理事が選ばれ、副理事には中国系の人
物が選ばれた。ストロスカーンは監視付きではあるが釈放され、ジ
ャーナリストである妻と共にNYの有名レストランで食事したこと
が伝えられた。

ここまでは地位ある男性を不名誉から守る男性中心社会の常套手段
が駆使されていると見えていた。強姦被害を届けた女性は、加害者
から売春婦として社会的に名指され、名誉を剥奪されてしまう。
金が欲しかったんだろうと、男たちの嘲笑が背中に投げつけられる。

地位も、権力も、金も、すべては加害男性の側にあり、女性の発言
の名誉までも剥ぎとって、加害男性は自分の正当性を詐称し捏造し
てゆく。ストロスカーン容疑者はすでに幾度も性暴力で訴えられた
前歴かくやくたる、札付き男性である。

こんなものを認めるわけにはいかない。このままではすまされない
と腹立たしく思いながら、しかしなすすべなかったやまねこが、昨
日、テレビをつけたところ、何と、被害女性が自らの名と顔をメデ
ィアに晒して、自己の潔白を訴えていたのだ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110726/t10014452173000.html

以下、NHK、WEBより。
「IMF=国際通貨基金の前の専務理事が、アメリカ・ニューヨー
クのホテルで女性に乱暴しようとしたとして逮捕・起訴された事件
で、告訴した女性が、地元テレビに出演し、みずからの主張の正当
性を訴え、アメリカ社会の関心を集めています。

この事件では、IMFの前の専務理事だったドミニク・ストロスカ
ーン被告(62)が、ホテルの従業員の女性に乱暴したとして逮捕
・起訴されたあと、裁判所が「従業員の女性の供述は信ぴょう性に
疑いがある」などとして、前専務理事の監視を解くことを決めてお
り、この女性の供述の信ぴょう性に注目が集まっています。こうし
たなか、この女性が25日、3大ネットワークの1つ「ABC」の
報道番組に出演し、実名を公表したうえで顔も隠すことなくインタ
ビューに応じました。

この中でこの女性は「事件当日、前専務理事が宿泊していた部屋に
清掃のため入ったところ、衣服を着けていないストロスカーン被告
に出くわし、すぐに部屋を出ようとしたが、突然襲われた」などと
説明してみずからの主張の正当性を訴え、「正義がなされるべきだ。
前専務理事には刑務所に入ってほしい」と述べました。これについ
て、前専務理事の弁護士は「金目当ての行動だ」などとして女性を
強く非難するコメントを発表しており、事件を巡る法廷の外での応
酬がアメリカ社会の関心を集めています」。

上記、「中立的」なNHKに対し、被害者の立場に対して少しは共
感あることが読みとれる東京新聞の記事。

 【ニューヨーク=青柳知敏】国際通貨基金(IMF)の前専務理
事ドミニク・ストロスカーン被告(62)を性的暴行罪などで告訴
したニューヨークのホテルの女性従業員が、二十五日に放映された
米ABCテレビのニュース番組に実名で出演し、同被告について「
刑務所に行ってほしい。権力や金で手に入らないものがあることを
知ってほしい」などと訴えた。

 この女性はギニア出身のナフィサトゥ・ディアロさん(32)。
米誌ニューズウィークの最新号でも、表紙に顔写真を掲載してイン
タビューに応じている。検察はディアロさんの証言に疑問点がある
として同被告の自宅軟禁を解除しており、メディアへの初の肉声が
関心を集めている。
 ディアロさんはインタビューで、五月十四日の事件発生時の状況
を生々しく証言。IMFトップだった同被告の地位は「事件翌日の
テレビニュースで初めて知り、殺されると思った」と述べた。
 検察に証言のブレを疑われていることは「私の側にも過ちがあっ
た」と落ち度を認めつつ、ABCの女性インタビュアーに「真実以
外は話していない。神様は知っている」と涙ながらに訴えた。

 同被告の弁護団はディアロさんのメディア露出を「見苦しい曲芸
だ」と非難。カネと世論の関心を引くための「最後の悪あがき」と
切り捨てている。

次回審理は823日である。
野次馬的な日本のメディアの中にあって、東京新聞の報道が異質で
あることが読みとっていただけたでしょうか。同新聞の報道に注目
しながら今後の展開を見守ることにしよう。

うらおもて・やまねこでした。


2011年7月21日木曜日

世界一でもエコノミークラス、「なでしこ」の意味すること


@@@@やまねこ通信114@@@@

女子サッカー「なでしこジャパン」がW杯でアメリカを下し優勝し
た。テレビにもスタジオ出演、新聞の一面トップ記事、大事件の扱
いである。「日本国」全体が沸き立ち、国民栄誉賞を与えようとの期待も
高まっている。

それに対する協会の報酬は優勝ボーナス150万円を倍増し300
万円にすること、記念品を贈るということであると伝えられている。
けれどたったこれだけの報酬で報われるのだろうか。

19日成田に帰国した選手たちは疲れ切った表情だった。彼女たちはド
イツ日本の帰国便はゆっくり休めるビジネスクラスを希望したが、
日本サッカー協会の決定はエコノミークラスだった。

交通費の序列ある日本サッカー協会。ここから見えてくるものは小
さくないとやまねこは思う。

規定では役員と日本男子代表の監督がファーストクラス、選手全員は
ビジネスクラスで移動することになっている。黒字出しているのは男
子サッカー部門であり、女子は不採算だから当然との声まである。

しかしこの考えからすると、一つの企業の中で不採算部門の社員は経
費も安くあげるという発想につながるのではないだろうか。こんな会
社があったら、同部門は必要な予算も与えられず、士気が低下し一層
の赤字化を逃れられないだろう。それよりも、同部門が不採算で経費
投ずるに値せず、将来性の見込めない部門であるなら、どうして整
しないのか、経営責任が問われるだろう。

今度の「なでしこジャパン」はワールドカップであれ、オリンピック
であれ、男子チームが一度も達成したことのない世界一を初めて実現
した。彼女たちの勝利は収益をどれだけ稼いだかという日常的企業会
計の数字で計るような次元をはるかに超えている。

「なでしこジャパン」は自分たちが価値ある「商品」になることで、
男子中心の日本サッカーリーグの商品価値を、国際的にアップグレー
ドさせ、その地位を飛躍的に高めた。日本サッカーリーグは今後、あ
らゆる場面で女子サッカー優勝の恩恵を受け、同時にその価値をアピ
ールしてゆくだろう。交通費を少し弾む弾まないという問題とは別次
元の問題だろうとやまねこは思う。

スポーツ選手の移動手段はコンディション作りに重要である。決勝戦
が終わったからもういいということはないだろう。日本サッカーリー
グは監督がファーストクラスと決まっている。果たして「なでしこジ
ャパン」の監督も、一人ファーストクラスに乗ったのだろうか。

移動手段の序列の目的はいったい何であろう。組織内の決定権は誰が
握っているかの権威を示すことではないだろうか。だとしたら日本サ
ッカーリーグも一般企業と同じではないか。

男子選手はたとえ控え選手であっても、全員をビジネスクラスで「運
搬」するところに、選手が重要な商品だとの認識が示されてはいる。
だとしたら、「なでしこジャパン」のWカップ優勝という緊急事態に
対して、機敏な判断が下されなかったのではないか。どの役員がこう
した決定の責任者なのだろう。
これを見ると、プロ野球リーグに比較して新しい組織、日本サッカー
リーグも、慣例墨守の日本型組織の例外ではなかったということであ
ろう。

今回のWカップ優勝以後の注目の的は、女子サッカーリーグが国内で
発足し選手たちが生活維持のアルバイトから解放されることであろう。
INAC所属の澤穂希選手らはサッカー一筋の生活を許されているそうだが。

今後女子サッカーの採算、不採算をリサーチするのは経営者、日本サ
ッカーリーグの仕事である。この組織が将来に向けてどれほど高感度
高品質の組織であるかは、残念ながら、今回のエコノミークラス決定
ある程度示されたとやまねこは考える。

ところで「なでしこジャパン」という名前が気になるのはやまねこだ
けではないらしい。はらふさこさんもメールに書いている。いまごろ、
日本の女子を「なでしこ」なんかで象徴するのかなあ。

野球の世界大会のチームは前回「サムライジャパン」とのネーミング
だった。「なでしこジャパン」も公募の結果決まったという。

中国のメディア新民網は「なでしこ」という愛称の語源である「大和
撫子(やまとなでしこ)」が「外面は柔和で内心は忍耐強く、高尚な
品を身に付けた女性のこと」を指すと紹介した。解説者は「本当にう
らやましい」とコメントして強い女子サッカーに羨望(せんぼう)の
まなざしが向けられているという。

「外面は柔和で内心は忍耐強く、高尚な品を身に付ける」という美徳
が、日本では女性に対してだけ向けられていたことについては、批評
眼は向けられていない。

「スポーツしてもいい。でも内面は柔和で品を失なっちゃだめだよ」
。どこまでも女性にたいして注文が厳しい男性中心社会の根強さが、
女子スポーツに対して向けた集合的意識がこんなことなんだろうな、
とやまねこは思う。

話は変わるが、「親切人のためならず」という諺は、もともと、他人
に親切にすれば、やがては自分に返ってくる。だから親切はけっして、
他人のためじゃない。自分のためなんだよという意味だった。

けれど今日の多くの人々の理解は違うらしい。
他人に親切にすると相手の努力の機会を奪い、ひいては自立の機会を
奪ってしまうから、結局その人のためにならない。安易に人に親切に
するもんじゃない。「自己責任」の発想である。

諺の意味するところが時代によって変わってゆく一例である。一方、
一つの花にも様々な意味がある。

「なでしこ」という花が、今後、「男たちの罵りにも負けず勝利を
もたらした強さと勇気を兼ね備えた女たち」という「なでしこジャ
パン」の実態を意味内容として強力に神話化して指示し続けるとし
よう。

そうすれば、「なでしこ」という花のシンボルに新しい意味内容が
加わって、「外面は柔和で内心は忍耐強く」という伝統的意味内容
の上に塗り重ねられてゆく可能性が大いにあるだろう。

「なでしこ」という花の象徴に新しい意味が加えられ、やがて変化
する。こうやまねこは考えている。

長野日報の719日(火)の一面コラムは語っている。「なでしこ
ジャパン」には海外で活躍する選手も少なくない。男子の選手が請
われて移籍するのと違い、女子選手は自ら飛び出していく選手が多
いという。これは国内で十分な活動の場がないことの裏返しだろう」。
これははたしてスポーツの世界だけの出来事であろうか。

女子サッカー世界一がメディアを狂乱させる一方で、世界134カ国中、
日本は94位というめでたくないニュースは常に新聞外信欄のベタ記
事にしか出て来ない。

世界経済フォーラムが発表する社会の男女差別の指標である「ジェ
ンダーギャップ指数」は、2010年、日本は94位であった。経済的に
豊かな国々で日本と同じ序列にあるのは、イスラム圏アラブの産油
国の国々である。

この不名誉な数字を、はたしてこの国のどれだけの人々が心にとめ
ているだろう?

うらおもて・やまねこでした。