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2011年8月3日水曜日

元航空幕僚源田実が回想する「亡国にいたった歴史」


@@@@やまねこ通信120@@@@

少しさかのぼるが、毎日新聞718日(月)2面「風知草」
という論説欄に、高速増殖炉「もんじゅ」について解説委
員山田孝男が書いている。

筆者はもんじゅを「国の土台をむしばむ虚構」砂上の楼閣
と呼ぶ。やめて当たり前の計画なのに、政府は、関係業界、
立地自治体、関連予算で生計を立てる人々の利害を優先し、
やめると言えずにいる。

もんじゅは1968年に起案。80年代には実用化予定だった。
ところが95年に火災が起き、ずるずる延びて現在では2050
年がメドという。福井県のもんじゅは青森六ヶ所村の再処
理施設とともに、原発から出る危険きわまりない使用済み
核燃料プルトニウムの引き受け施設。けれど二度事故を起
こして動かせないままである。

このお荷物に対して政府は延べ1兆円の税金を費やし、なお
毎年200数億円ずつつぎ込もうとしている。

山田解説委員は語る。
「ダメと分りきった作戦で亡国に至った歴史があった。太
平洋戦争だ。航空決戦の時代と知りながら日本は大艦巨砲
主義に固執して負けた。なぜか。元航空参謀の源田実の回
想が興味深い」。

「大砲がなかったら自分たちは失業するしかない。多分そ
ういうことでしょう。兵術思想を変えるということは、単
に兵器の構成を変えるだけでなく、大艦巨砲主義に立って
築かれてきた組織を変えるとことになるわけですから。人
情に脆くて波風が立つのを嫌う日本人の性格では、なかな
か難しいことです」(「日本海軍の功罪」94年プレジデ
ント社)

この文の「大砲」「兵器」「大艦巨砲主義」の代わりに、
「もんじゅ」(原発)をいれて読んでみよう
「もんじゅ(原発)がないと自分たちは失業するしかない。
多分こういうことでしょう。発電のエネルギー源を変える
ということは、単に発電機の構成をかえるだけでなく、原
発依存主義にたって築かれてきた組織をかえることになる
わけですから」。

「人情に脆くて波風が立つのを嫌う日本人の性格では、な
かなか難しいことです」という最後の部分については、権
力の中枢に参与した源田実の美辞麗句だとやまねこは思う。

「人情や波風をたてない」ために組織を変えないのではな
い。もっとはっきり言うなら自分の利益を失わないためで
あり、さらに自分たちの権益共同体を温存するためである。

正力松太郎、中曽根康弘らの原発導入を顧みて、国の利益
を考えての事だったと語るまともな伝記作者は、おそらく
皆無であろう。この国の市民の核に対する不安を、膨大な
費用を掛けて嘘の広告を反復することでかわし、原発が生
み出すプルトニウム処理の困難を隠蔽したまま、原発を自
己の政治的野心の切り札として利用したことが後世に伝
えられるであろう。

ところで源田実は戦争中の海軍大佐にして大本営幕僚。戦
後自衛隊に入り、航空幕僚として名をはせた。「源田サー
カス」と呼ばれた航空ショーを開発したことで知られてい
る。Wikipediaを開くと、源田実の毀誉褒貶について書かれ
ている。

「源田は良くも悪くも海軍航空の中心人物であったが、真
珠湾攻撃や343空の成功の裏に、ミッドウェー海戦やマリア
ナ沖海戦、台湾沖航空戦、航空特攻などにおける失敗があり、
彼の責任は極めて重い」。「優秀な幕僚と言っても現場を踏
んではいない」等。

安保闘争の2年後、1962年に源田は参議院選挙全国区に自民
党から出馬した。

このときのことをやまねこは忘れない。
やまねこの父親が、源田実が出馬することを知って、新聞
見ながら源田に一票を投じると言ったのだ。
父は県立高校の英語教師で、戦後民主主義の一応の信奉者の
はずだった。

自民党の源田実に投票するということは、再軍備につながる
こと。何よりも戦争中の軍人を今頃政治の表舞台に登場させ
るとは何事かという趣旨の反論をやまねこは主張し、父を批
判した。

17歳の高校生だったやまねこは日ごろの父の言動との矛盾
を突いたつもりだった。

父は源田実が抜群の能力の持ち主だったことを語った。軍人
の中でも源田のような人物が中心にいたら、あんなみじめな
負け方はしなかったと言いたかったのであろう。

しかしそれだけでなく自民党や社会党の腐敗した政治家より
も源田実の方がよほど清廉潔白な人物だとも語っていた。

源田実は1904年の生まれ。やまねこの父より8歳上であ
る。海軍での活躍ぶりが軍国青年だった時代の父の憧れの的
であり、その血が騒いだのかもしれないとやまねこは今、想
像する。

反権力の左翼ではなく、戦前の海軍軍人で、戦後なお、権力
中枢に復帰した源田実のような人物が、
「大砲がなかったら自分たちは失業するしかない」
と、組織の温存を図る権力者の存在を警告していることがや
まねこには重要に思われる。内部告発の一種ではないか。

「もの」を変えるには、「人と人の関係」が変わらねばなら
ないとやまねこは考えている。父との論争の的だった源田実
がこれと同じことを語っていたことを知ってやまねこは面白
いと思った。

再び山田解説委員の言葉。
「わかっちゃいるけど、やめられない。もんじゅの背後に原
発があり、電力会社がある。重電メーカーが寄り添う。気前
のいい電力会社は銀行の高利安全の融資先。この構造に連な
る膨大な人々の利害が経済成長の大艦巨砲主義の基礎である」。


うらおもて・やまねこでした。

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