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2012年1月10日火曜日

嘉田由紀子滋賀県知事の治水政策はすごいよ!

@@@@やまねこ通信176@@@@

●脱ダムをするには、上流の山地の整備、森の樹木を針葉樹
から広葉樹に転換するなどの対策を、真剣かつ早急に開始す
る必要があります。

けれど、ダムなしで洪水を防ぐ対策は、治山ばかりではない。
河川であれダムであれ、流れの「線」だけに水を閉じ込める
対策は、しょせん無理があるといいます

ここに嘉田由紀子滋賀県知事が注目し、土木政策に転換をも
たらす政策を打ち出しました。「線」から「面」への発想の
転換です。

水が通る場所と乾いた場所、河川と陸地の二項対立を超えて、
普段は乾燥しているが、豪雨の折には遊水池になる第三の
所を確保することの必要性を認識。

洪水を想定してあふれた水を流し込む遊水地がかつて作られ
ていた。滋賀県でこの遊水地、霞堤を作ったのは、彦根藩主
で幕府大老を務めた井伊直弼

ところがかつての遊水地霞堤が、70年代になんと住宅地に化
けたという!

1000億円などの巨額費用を丸ごと投じなくては機能しな
いダム。ところが流域整備は小型予算をつなぐことで効果が
得られるから安上がりとのこと。


以下、毎日新聞 201214WEB記事を抜粋してお伝え
します。 

●「滋賀県東近江市を流れる愛知(えち)川左岸にある団地
「ドリームハイツ」。霞堤(かすみてい)の中にあり、氾濫
時の遊水地とされた場所だ。

「こんな危ない場所に住宅建築を認めたのか」。07年から
県内各地の河川を点検していた県の治水政策の担当者は、現
地で実感させられた。

霞堤は江戸時代末期、彦根藩主で幕府大老を務めた井伊直弼
が整備した。

堤防を二重に造って内側の一部を低くし、増水したら意図的
に水をあふれさせ、対岸や下流の街を守る。しかし、70年
代に遊水地内に団地が造成され、人々は競うようにマイホー
ムの夢をかなえた。90年9月、紀伊半島に上陸した台風1
9号は、団地の約200戸を水浸しにした。

高度成長を経て豊かになり、人口も増え続けた日本は、宅地
開発に突き進んだ。水害リスクが高い地域にも家が建ち並ん
だ。一方で、治水政策はダムや強力な堤防の整備を進め、川
に水を封じ込めようとした。水を逃がして被害を減らす先人
の知恵は忘れられた」。

やまねこは思う。宅地開発の施工主体であるデベロッパーは、
土地のもつ歴史的役割を顧みることがなかった。宅地化して
売りだし買う人がいれば儲かる。けれど開発を許可したのは
自治体ではないか。自治体が「先人の知恵を忘れ」て宅地造
成を許可した。時は70年代である。

さらに、毎日新聞WEB記事
●「膨大な時とカネを費やし生態系に影響を及ぼすダムや巨
大堤防は、疑問を抱かれつつある。宮本博司・元国土交通省
防災課長は「国はハード整備を金科玉条に、住民に本当の危
険性を警告しなかった。川の中に水を閉じ込める仕組みは想
定外の災害に弱い」と指摘する。

06年に初当選した嘉田由紀子・滋賀県知事は、ダムだけに
頼らない治水に挑んだ。県民からも委員を公募して議論し、
出てきたアイデアが危険性の高い地域での建築規制だった。
正確な客観的指標が必要で、県は全域の浸水想定に乗り出し
た。

浸水想定は担当者の現地調査を踏まえ、河川だけでなく下水
道や農業用水も対象にした。最大で1000年に1度の規模
まで、7段階の洪水をシミュレーション。5メートル四方単
位で浸水を想定した図は近く公表される。

県は危険地域の宅地かさ上げ義務化などを盛り込んだ条例案
作成を進めており、来年度にも提出したい構えだ。河川改修
などハード整備が遅れると懸念する県議、市や町の反発は強
いが、嘉田知事は強調する。「行政はあらゆる想定を出し、
全力で取り組むべきだ」

◇霞堤(かすみてい)
堤防の一定区間を低くして「開口部」とし、その下流側の
端から上流側に向けて斜めにつくられた二重の堤防。河川が
増水した時は、開口部から水をあふれさせ、霞堤との間に水
をためることで、下流や対岸の洪水被害を避ける仕組み。二
重の堤防を設けず、同様に堤防の開口部から遊水地に流す仕
組みとして、洗堰(あらいぜき=越流堤)もある」。

●次は嘉田由紀子知事へのインタビュー。
--「滋賀モデル」の特徴は何ですか。
 ◆人命を救うためには川の外、つまり人が住むところのリ
スクを、皆が共有しなければいけない。そういう目で県内を
歩くと、昔の人は水を逃がす工夫をして危ない場所に住まな
かったことに気づく。今、浸水する場所を見ると新興団地が
ある。地価が安い田んぼを開発した結果、新しい住民が被害
を受ける。これを避けたい。

 --行政も、危険な地域の開発を容認してきたのでは。
 ◆都市計画に自然災害リスクがほとんど考慮されてこなか
った。リスクが明らかになっても、首長は住民の苦情を恐れ、
説得する覚悟が弱い。そして被害を受けたら「想定外」と言
う。これは行政の逃げ。滋賀県は「開発するなら最悪のリス
クも知って、あらかじめ手立てをしてください」と言ってい
く。

 --一部市町は、「川の中の治水」が不十分になるのでは
と懸念しています。
 ◆河川整備もやる。県下全域の川の危険度をランク付けし
て重点的にお金を入れる。それでもハードの想定を超えソフ
トで受け止める場合は、「想定外」と言わず命を守ることを
目標とする。ダムは環境や社会への影響が大きく、金も時間
もかかり、1000億円のダムなら1000億円全額投入し
ないと効果が出ない。八ッ場など多くのダムが何十年もかか
って効果がない。川の中と外、両方で段階的に安全度を上げ
る必要がある」。(WEB記事引用終わり)


二つの意味でこのニュースが朗報だとやまねこは思いました。

●第一に、1000年に一度の洪水も想定しての災害防止シ
ミュレーション。3.11以後の、決定的に新しい体制が出
発することです。

都市計画に自然災害リスクがほとんど考慮されてこなかった
のは、首長が住民の苦情を恐れたためだった。住民を説得す
る気がない上、被害を受けたら「想定外」と逃げる。

これは全国どこでも同じであろう。
人が居住する宅地の危険を知った時、首長ははたして住民に
そのことを知らせるだろうか?

ほとんど知らせることはあるまい、とやまねこは思うのです。
不動産価格の下落などが私権の侵害に抵触しかねないことも
一つの理由でしょう。

けれど1000年に一度の災害に備えることが開発許可の新
しい基準になったら、これまでのような見て見ぬふりの、な
あなあ、では済まされなくなりますね。

諏訪湖沿岸地域の古い堆積層が広大にひろがる諏訪地域にあ
っては一層のこと、災害対策の見直しは他人事では済まされ
ません。責任あるのは首長だけではないでしょう。

●第二に、この施策を開始するのが嘉田由紀子という女性知
事だということです。

遊水池を活用する流域整備の選択は、予算の無駄使いを排し、
しなやかに機敏に、歴史の知とローカルノレッジに顧慮した
アイディアです。


大きな予算を獲得することが<男らしい>と勘違いしてきた、
従来の官公庁、行政、企業のダークスーツにネクタイのスタ
ッフには、とても手が届かないコンセプトです。

「同調圧力」(注)に影響されぬ女性知事の決断が、無数の
しがらみにまみれている土木の世界、全国の治水政策、都市
開発政策の新しい方向をリードするとしたら、社会の仕組み
が根本から様変わりするでしょう。

(注)「同調圧力」:政策決定の際に、多数意見を支持する
ように働く強制力。一般的に男性の多くが屈してしまいがち
な組織内の圧力。
(やまねこ通信154号をご参考ください。

北海道電力泊原発の再稼働の折、「やらせメール」の慣例を
踏襲したまま、女性知事が稼働許可を出したことを知ってが
かりした後だけに、嘉田由紀子知事の英断はやまねこにと
り、殊更の朗報として響きました。

女性首長の数があまりに少ない現状。一人でも多くの女性首
長を選出する弾みになったらいいのにねえ。
かねがね注目していた滋賀県嘉田由紀子知事の新しい治水政
策を前に、こうやまねこは思ったのでした。

一方で、利権を手放すまいとする旧勢力が、陰に陽に、今後
どのような妨害を働くのか。このことにも今後注意を怠らぬ
ようにいたしましょう。




うらおもて・やまねこでした。

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