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2012年9月26日水曜日

遺伝子組み換えを批判するバンダナ・シバさんの原発批判


@@@@やまねこ通信222@@@@

毎日新聞「ひと」欄に、バンダナ・シバ氏が登場している。
「女性の視点でインドで環境保護運動を続ける」バンダナ・シバ
さん(Vandana Shiva)との見出し。 

バンダナ・シバ氏は、目下、遺伝子組み換え作物を製造販売す
ることで巨大な利益をむさぼろうとする巨大資本、新自由主義
グローバリズムと真っ向から闘う、今日、最も重要な思
想家、活動家です。

(以下毎日新聞「ひと」引用)
「経済成長の一方で広がる貧富の格差や環境破壊−−。さまざま
な矛盾を抱えるインドで、貧しい人々や女性の視点に立って環境
保護を訴えてきた。20年以上の運動は多くの農民に影響を与え
た。

21歳の時、故郷近くの村で、女性が木に体を縛り付け命がけで
森林伐採を防ぐ「チプコ(抱きつく)運動」に出会った。「人間は地
域固有の作物に生かされていることを彼女たちに教わった」という。

カナダに渡り、哲学と物理学を学んだ。帰国後、女性たちに環境
保護運動への参加を呼びかけた。91年にはNGOを設立し、地
域固有の植物の種を保存する活動や、有機作物のフェアトレード
(公正な貿易)運動を展開した。

「種は命。企業や国の開発による単一品種栽培で、農家は多様
性と自由を失った」
村々を回り伝えた思想は、著作を通じ世界にも広がる。93年に「
もう一つのノーベル賞」と言われるライト・ライブリフッド賞を受賞した。

第23回福岡アジア文化賞の大賞に決まり、今月来日した。東京
電力福島第1原発事故について「原子力は近代化と同じで、一つ
の方向性、価値観を唯一無二のものとして押しつけてきた。それ
が破綻を見せた今、日本は岐路に立っている」と考えている。

13日に福岡市で行われた授賞式のスピーチで強調した。「豊かに
なる方法はさまざま。これからも世界に多様性と平和を広げていき
たい」。【関東晋慈】(以上引用)

以上、毎日新聞の紹介は、かなり柔らかい描き方であった。

●日本では、環境保護運動とフェミニズムは手を取り合うというより、
背中合わせの場合が多いとやまねこは受け止めている。バンダナ
・シバは「エコフェミニズム」という本をマリア・ミースと共に1993年に
出版した。エコロジーとフェミニズムの合体である。このことで、やま
ねこは、その名を記憶するようになったと思う。けれど、まとめて取
り組んだことはまだなかった。

バンダナ・シバは環境関連、フェミニズム関連のジャーナリズムに
登場することが多く、来日機会も、これまで幾度かあったと思う。

現在日本語の翻訳が2冊出ている。『緑の革命とその暴力』それに
『バイオパイラシー・グローバル化による生命と文化の略奪』である。

この機会に、ネット検索をしてみた。やまねこが紹介したかった内容
がズバリ書かれたネット記事「コジローのあれこれ風信帖」
見つかった。同記事のエッセンスを、次に引用します。

●「20099月13日、「緑の革命」を指導し、アジアの
数億人を飢餓から救ったとしてノーベル平和賞を受賞した
米国の農学者ノーマン・ボーローグ氏が、95歳で亡くな
った。

「緑の革命」とは、1950年から70年にかけ主として
アジアや中南米で展開された一連の農業技術開発を指す。
具体的には何よりもまず小麦や米など主要穀物での多収品
種の開発、次いでこの「奇跡の種子」の栽培に不可欠な化
学肥料や農薬の導入、さらには地上水ならびに地下水によ
る大規模灌漑、機械化等々だ。

これにより飢えに苦しんでいたインドやメキシコなど途上
国の穀物生産は飛躍的に増大。この革命をリードした功績
により、ボーローグ氏は「歴史上の誰よりも多く人命を救
った人物」としてノーベル平和賞を受賞するに至る。

だが、その晩年、「緑の革命」はこうした賞賛とは正反対
の厳しい批判を受けることになる。おそらく、最も全面的
で体系的な批判を展開しているのはインドの女性思想家バ
ンダナ・シバ氏だろう。氏の報告は著書『緑の革命とその
暴力』(日本経済評論社)で詳細に紹介されている。

「緑の革命」は「奇跡の種子」を売る種苗会社、農薬や化
学肥料を販売するメーカーや商社による農家農村の支配を
生み、生み出された余剰農産物は穀物メジャーや途上国側
買弁資本による農地の暴力的収奪を呼んで農家農村の農奴
化貧困化を招き、また農薬や化学肥料の投入は農地の生態
系を破壊し、灌漑は地下からの塩害を呼んで広大な耕地を
不毛の荒野に変え、かくして地域の伝統的で持続的な暮ら
し方や農村の自給力は根底から破壊されたというのだ。

ボーローグ氏は生前、「緑の革命」を居心地のよい書斎か
ら批判する西欧のインテリ環境活動家に対し、「彼らは空
腹の苦しみを味わったことがない」「もし彼らがたった1
ヵ月でも途上国の悲惨さの中で生活すれば(それは私が5
0年以上も行ってきたのだが)、彼らはトラクター、肥料
そして潅漑水路が必要だと叫ぶであろうし、故国の上流社
会のエリートがこれらを否定しようとしていることに激怒
するであろう」と述べて、激しくそれに反論した。

だが、インド人であるシバ氏による「緑の革命」の現場か
らの生々しくもつぶさなレポートは疑いなく真実だろう。
飢餓との闘争を戦ったつもりのボーローグ氏にしてみれば、
思いもよらない結果だったかもしれない。グローバリゼー
ションが世界を席巻するに及び飢餓人口は年々増え続けて
今や実に10億人を超え、毎日3万人の子どもたちが餓死
している。では「緑の革命」とはいったい何だったのか。

ボーローグ氏の不幸は、氏が貧困と飢餓に挑むためになし
た命がけの科学的業績を、金儲けの絶好の機会ととらえる
資本とグローバリズムの本性に、氏があまりに無邪気であ
ったことに起因するだろう。ちなみに氏のグループの研究
資金はロックフェラー財団から出ていた。研究の出資者に
その成果の配当を要求する権利は当然ある。

シバ氏はいま、新自由主義やグローバリズムとの戦いに全
力を挙げている。ことに食糧自給面でのグローバリズムと
の闘争でいま最も熱い焦点は、遺伝子組み換え作物の商業
栽培を許すかどうかだ。遺伝子組み換え作物の開発に従事
する科学者のなかには、真剣に将来の人口爆発や地球温暖
化に備えるために必要と信じている人もいることを知って
いる。だが、科学の蛸壺にこもって社会への視野を持つこ
とを怠れば、資本に都合よく利用されるだけに終わる恐れ
があることを、ボーローグ氏の嘆きは教えている。

資本の論理が貫徹するグローバリズムの世界において、無
知なる善意は何の解決にもなりはしない。不幸なことだが」。
http://plaza.rakuten.co.jp/ecopiecealpinism/diary/200909300000/

以上は、「コジローのあれこれ風信帖」というネットで見つ
かったブログ記事に、やまねこが手を加えたものです。

●やまねこは、毎日新聞記事の次の箇所にいたく心を打たれました。
「21歳の時、故郷近くの村で、女性が木に体を縛り付け命がけで森
林伐採を防ぐ「チプコ(抱きつく)運動」に出会った。「人間は地域固有
の作物に生かされていることを彼女たちに教わった」という。

とりわけ、やまねこの同世代の方々の中に、成田闘争を思い出す方
もあるのではないでしょうか。成田闘争でもやはり、木に身体をくくり
つけ、機動隊警官のごぼう抜きに対抗する農村女性の闘争が報道
されました。


新空港建設の際、建設省、運輸省側は、三里塚の開拓農民
たちに対し、説得の手間の必要を認めることなく、「国策」
の大義のもと、高圧的に用地収用に乗りだしました。
この時の国の対策の拙さ、愚かしさは、後に、政府の謝罪
につながりました。

ドイツは後年、新空港を造る際に、成田の失敗を徹底研究

し、空港用地となった地域の住民にたいする説得を何より
も最重要視し、十分な時間と手間を掛けたことが、伝えら
れています。

成田空港建設反対闘争は、ベトナム戦争と時代的に並行していまし
た。南ベトナムの沼に身を置く人びとが、「近代」兵器で身を守る
米軍に対抗してあらん限りの知恵と力で戦ったのでした。

この結果、ベトナムでは「近代」すなわち米軍が敗北したのです。ベ
トナム戦争で「近代」は終わったはずでした。ところが、その後も米国
は、アフガニスタン、イラクを相手に、大義なき「ベトナム戦争」を繰
り返しています。

この国で、原発が作られたのは、1970年代以後であり、成田闘争は
末期を迎えていました。

バンダナ・シバ氏の次の発言を最後に繰り返します。

東京電力福島第1原発事故について「原子力は近代化と同じで、一
つの方向性、価値観を唯一無二のものとして押しつけてきた。それが
破綻を見せた今、日本は岐路に立っている」。


うらおもて・やまねこでした。

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