ページビューの合計

2012年12月11日火曜日

山中教授ノーベル賞報道が伝えないこと、スウェーデンの女性学長、日本の良妻賢母神話


@@@@やまねこ通信243@@@@

ノーベル賞授賞式は、創設者アルフレド・ノーベルの命日
である十日夕(日本時間十一日未明)、ストックホルム市
内のコンサートホールで開かれた。

山中伸哉さんは、妻知佳さんと81歳の母美奈子さんを同行
してストックホルム入り。家族は、娘2人である。

家族もさることながら、山中さんの周辺には、女性研究者
が多い。

「この成功は私だけのものではなく、三人の若い科学者、
高橋和利君、徳沢佳美さん、一阪朋子さんの努力なしには
成し遂げられませんでした。また、iPS細胞に至る三つ
の道筋をつくった科学者たちにも感謝したいと思います」
と語る山中氏。

共同研究者である若い高橋和利さん、徳沢佳美さん、一阪
朋子さんを同行した。うち二人は女性である。

山中さんが所長を務める京大の研究所には、女性研究者が
少なくない。山中さんは多数の女性研究者を育てている。
生物学は女子の多い分野でもある。

●山中教授のノーベル賞授賞スピーチが、評判である。
「自然そのものが師であり、時に予想しなかったことを教
えてくれた」との結論。

その冒頭、こんな出来事を語った。
医学生理学賞発表前日の10月7日のこと、京都での国際
学会に、同賞選考にあたるカロリンスカ研究所のワルベリ
ーヘンリクソン所長が出席した。

その折、山中さんは、所長が「私にウインクしたような気
がした」と明かした。

「そのときは本当にウインクしたか自信がなかったが、今
は確信している」
この話を聞いて、万場が笑いの渦だった模様。

●研究所長が山中氏にウインクしたとの話に万場が笑い転
げた。カロリンスカ研究所所長が女性であったことをはっ
きり示さないことには、おかしさが伝わらないだろうに!

いくつもの新聞のウエブ紙面をネット検索してみたが、ワ
ルベリーヘンリクソン所長が女性であることに注目した記
事はひとつも見当たらない。

●カロリンスカ研究所のワルベリーヘンリクソン所長はフ
ルネームが、ハリエット・ワルベルイ-ヘンリクソン
Harriet Wallberg-Henriksson)。

カロリンスカ研究所はスェーデンの最大の医科大学。ノー
ベル医学生理学賞受賞者を選考する機関である模様。

カロリンスカ研究所のウェブページをやまねこは訪問した。
さすが、ジェンダー平等において世界1、2を争うスウェ
ーデンだけある。

研究所の理事会は定数20名、男女の割合が10人、10人。
学生代表、職員代表も理事会に参加している。

カロリンスカ研究所の所長、すなわちスェーデン最大の医
科大学の学長が女性なのである。

東大の医学部長や学長、東京医科歯科大学長が女性である
と同じである。

山中さんのノーベル賞授賞をきっかけに垣間見えるスウェ
ーデン、ジェンダー平等社会の進み方!

日本のメディアは、もっと驚いていいのにねえ!
驚かなくては!
どうして驚かないの?

メディアが驚かないことに、やまねこは驚く!
見えないふりして通り過ぎようとしている。

このように、驚くべきところに驚かないメディアの、アン
テナを寝かした体質が、この国のジェンダー不平等を温存
する大きな要因である。

結果、山中さんの授賞式は、日本社会では、次のように報
道される。

●「ノーベル賞:山中さん授賞式 正装の夫「かっこいい」
 和服の妻、寄り添い

毎日新聞 20121211日 東京朝刊
【ストックホルム須田桃子】日本人として25年ぶりにノ
ーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授(5
0)は10日午後(日本時間同日夜)、宿泊先のグランド
ホテルで身支度を整えた。山中さんはえんび服の正装で、
妻知佳さん(50)は山中さんが選んだというおしどり柄
の淡いピンク色の和服姿。山中さんは「家内はよく着物を
着る機会があるので、いつも通り似合っている」と照れく
さそうに語った。知佳さんは山中さんのえんび服姿に「か
っこいいです」と応えた。
 知佳さんは、山中さんと中、高時代の同級生で皮膚科医。
山中さんが93年に米国へ留学した際は、自分の仕事を中
断し、幼い娘2人を連れて同行するなど、研究者として歩
む夫を支えてきた」。

●親愛なるやまねこ通信読者のみなさん!
この記事に、「良妻賢母」神話が集約されているのです!

「良妻賢母」神話、すなわち、女たるものは、すべてを投
げ打って、夫を支え、家庭を支え、子育てに専念するのが
あるべき姿。これこそ、戦前の女子教育の目標であり、戦
後も生き延びて、女だけに向けられた「道徳」です。

妻の知佳さんは、山中さんと高校同期生だから同年である。
夫の山中さんがキャリアを追求する時期には、皮膚科医で
ある妻の知佳だって、同じ時期に差し掛かっていただろう。

ところが、「93年に米国へ留学した際は、自分の仕事を
中断し、幼い娘2人を連れて同行するなど、研究者として
歩む夫を支えてきた」ことを、この記事は、「美談」のよ
うに語っている。

女たちが積み上げたキャリアは、「家族を支える」との大
義名分のために、あっという間に手放さなければならない。

「旦那さん一人おいて、あなたは何をしてるよの!」
こうした有言無言の非難が、今でも女たちを襲っている。
だから女性研究者はなかなか増えない。

こうした話をあちこちで見聞きしているやまねことしては、
無条件でこの「美談」を受け入れるわけにはいかないこと
を、ここで強調しておきたい。

冠婚葬祭の折には、厳しい話をしないのが、この国の「美
風」である。けれど、ジェンダー不平等を、少しずつ改善
しても、ノーベル賞受賞の「慶事」で、すべてを水に流し、
元通りの女の役割への復帰を喜んでいるわけにはゆかない
のです。
  
総選挙後の社会は、自民「大勝利」のため、ジェンダー不
平等への逆戻りが約束され、「良妻賢母」神話を根におい
た考えが、大手を振ってまかり通るであろう。

山中さんのノーベル賞受賞が明らかにしたこと。
それは、スウェーデン社会では、医科大学学長が女性であ
ったこと。

逆に、日本では、メディアがいまだに女性のキャリアより
「良妻賢母」が立派だよ、とそれとなく繰り返し、ジェン
ダー不平等を再生産している現場だったのです。



うらおもて・やまねこでした。


選挙関連のジェンダー平等政策については「ちの男女共生
ネット」ウェブページをご訪問くださいますよう、お願い
いたします。

http://ameblo.jp/gender-equality-chino


0 件のコメント:

コメントを投稿