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2013年2月7日木曜日

女子柔道選手15人の声「全文」、越えてならない一線はどこにあるのか?



@@@やまねこ通信257@@@


今日も重い雪が小降りのお天気。
昨日は、雪が前夜から6センチほど降り積もり、朝になっても
やみませんでした。午後から第4回目の女性市議さんとの懇談
会の日。ゆるゆる車をころがしながら、会場に出かけました。

学校での体罰の問題を、ネットの仲間たちが語ります。
「体罰はどんなものでも大反対です」決然たる声が幾つもあが
ります。こども時代に被害を受けたり、それを目撃した経験者
の意見は実に明確です。ほとんどの女たちがその経験者です。

「その通りだよ。当たり前じゃない!」
両方の経験者、やまねこは思います。

体罰であれ、セクハラであれ、被害を受けた側がどう受け止め
るかが、最大に大切です。当事者の思いをしっかり受け止めそ
れに寄り添うことが、出発であり、終着です。

当事者の話を聞かぬまま、「第三者的」立場であれこれ議論し
ても、事件の真相から遠ざかるばかりです。

このことが、女子柔道選手の15名に対して、実行されたでし
ょうか?

次の文は、女子柔道「女子ナショナルチーム国際強化選手15
名」の告発文の全文、朝日新聞ウェブです。
http://www.asahi.com/sports/update/0204/TKY201302040293.html

●皆様へ
 この度、私たち15名の行動により、皆様をお騒がせする結
果となっておりますこと、また2020年東京オリンピック招
致活動に少なからず影響を生じさせておりますこと、先ず以て、
お詫び申し上げます。

私たちが、JOCに対して園田前監督の暴力行為やハラスメン
トの被害実態を告発した経過について、述べさせていただきま
す。
私たちは、これまで全日本柔道連盟(全柔連)の一員として、
所属先の学校や企業における指導のもと、全柔連をはじめ柔道
関係者の皆様の支援を頂きながら、柔道を続けてきました。こ
のような立場にありながら、私たちが全柔連やJOCに対して
訴え出ざるを得なくなったのは、憧れであったナショナルチー
ムの状況への失望と怒りが原因でした。

指導の名の下に、又(また)は指導とは程遠い形で、園田前監
督によって行われた暴力行為やハラスメントにより、私たちは
心身ともに深く傷つきました。人としての誇りを汚されたこと
に対し、ある者は涙し、ある者は疲れ果て、又チームメイトが
苦しむ姿を見せつけられることで、監督の存在に怯(おび)え
ながら試合や練習をする自分の存在に気づきました。代表選手
・強化選手としての責任を果たさなければという思いと、各所
属先などで培ってきた柔道精神からは大きくかけ離れた現実と
の間で、自問自答を繰り返し、悩み続けてきました。

ロンドン五輪の代表選手発表に象徴されるように、互いにライ
バルとして切磋琢磨(せっさたくま)し励まし合ってきた選手
相互間の敬意と尊厳をあえて踏みにじるような連盟役員や強化
体制陣の方針にも、失望し強く憤りを感じました。

今回の行動をとるにあたっても、大きな苦悩と恐怖がありまし
た。私たちが訴え出ることで、お世話になった所属先や恩師、
その他関係の皆様方、家族にも多大な影響が出るのではないか、
今後、自分たちは柔道選手としての道を奪われてしまうのでは
ないか、私たちが愛し人生を賭けてきた柔道そのものが大きな
ダメージを受け、壊れてしまうのではないかと、何度も深く悩
み続けてきました。

決死の思いで、未来の代表選手・強化選手や、未来の女子柔道
のために立ち上がった後、その苦しみは更に深まりました。私
たちの声は全柔連の内部では聞き入れられることなく封殺され
ました。その後、JOCに駆け込む形で告発するに至りました
が、学校内での体罰問題が社会問題となる中、依然、私たちの
声は十分には拾い上げられることはありませんでした。一連の
報道で、ようやく皆様にご理解を頂き事態が動くに至ったので
す。

このような経過を経て、前監督は責任を取って辞任されました。
前監督による暴力行為やハラスメントは、決して許されるもの
ではありません。私たちは、柔道をはじめとする全てのスポー
ツにおいて、暴力やハラスメントが入り込むことに、断固とし
て反対します。

しかし、一連の前監督の行為を含め、なぜ指導を受ける私たち
選手が傷付き、苦悩する状況が続いたのか、なぜ指導者側に選
手の声が届かなかったのか、選手、監督・コーチ、役員間での
コミュニケーションや信頼関係が決定的に崩壊していた原因と
責任が問われなければならないと考えています。前強化委員会
委員長をはじめとする強化体制やその他連盟の組織体制の問題
点が明らかにされないまま、ひとり前監督の責任という形を以
て、今回の問題解決が図られることは、決して私たちの真意で
はありません。

今後行われる調査では、私たち選手のみならず、コーチ陣の先
生方の苦悩の声も丁寧に聞き取って頂きたいと思います。暴力
や体罰の防止は勿論(もちろん)のこと、世界の頂点を目指す
競技者にとって、またスポーツを楽しみ、愛する者にとって、
苦しみや悩みの声を安心して届けられる体制や仕組み作りに活
かして頂けることを心から強く望んでいます。

競技者が、安心して競技に打ち込める環境が整備されてこそ、
真の意味でスポーツ精神が社会に理解され、2020年のオリ
ンピックを開くに相応(ふさわ)しいスポーツ文化が根付いた
日本になるものと信じています。

2013年(平成25年)2月4日
公益財団法人全日本柔道連盟
女子ナショナルチーム国際強化選手15人  (以上引用)

●やまねこは、次の表現に注目します。
「私たちの声は全柔連の内部では聞き入れられることなく封殺
されました。その後、JOCに駆け込む形で告発するに至りま
したが、学校内での体罰問題が社会問題となる中、依然、私た
ちの声は十分には拾い上げられることはありませんでした。一
連の報道で、ようやく皆様にご理解を頂き事態が動くに至った
のです」。

全日本柔道連盟に、被害者の声をまともに取り上げる態勢があ
ったなら、JOCに駆け込む必要はなかったと、15人の選手は
訴えています。


●ロンドン五輪で女子柔道金メダルを獲得したハリソン選手の
事件が思い浮かびます。

「6歳から柔道を始めたハリソン選手は8歳から指導を受けて
いた元コーチから性的被害を受けた。14歳のときからだった。
「2人だけの秘密」と元コーチに口止めされ、約3年間、誰に
も相談できなかった。しかし、16歳のときに周囲に告白。母
親が警察に連絡し、裁判に。ハリソン選手も法廷に立ち、元コ
ーチとの関係を証言。元コーチは2007年に懲役10年を言
い渡され、米柔道界からも追放処分となった」。

@@@@やまねこ通信212@@@@
「五輪柔道・男子日本金メダルゼロ、女子米国金メダリスト「
性的虐待からの回復の物語」、日柔連はセクハラ被害支援体制
を導入せよ!」

●全柔連は体罰・暴力、ハリソン選手は性的虐待との違いがあ
ります。けれど、監督コーチら、選手にとって「先生」であっ
た男性が女性に対して向けた行為であることに変わりありません。

16歳の女子の被害の訴えに耳を傾けた米国と日本の、被害者に
対するこの対応の違いはどうして生まれるのでしょう。

それは女性に「人権」が認められているかどうかの違いだと、
やまねこは考えます。

全柔連は、女子選手たちの声を退けました。男性からなる監督、
コーチらは管理し指導する立場です。けれど、暴力の被害を与
えて良いわけがありません。

越えてならぬ一線はどこにあるのか。
それは、暴力を受けた被害者の訴えの中にあります。被害者の声
を聞くことで事件の解明が始まります。被害を受けた選手たちは、
暴力のために怯え、人格を否定されました。しかし恐くて訴え出
ることができませんでした。

監督と選手の立場の違いがあっても、人は誰しも、立場や性別を
越えて、共通して与えられているものがあります。

それが「人権」です。人は誰しも「人権」で守られねばなりませ
ん。「人権」があるから人は平等になれるのです。


ところが全柔連では、女子選手には「人権」がなかったことが分
かります。これでは、「身分社会」と同じです。全柔連は、憲法
がすべての国民に保証する「人権」が通用しない集団でした。

●女性柔道家の山口香さんは、JOC女性スポーツ専門部会の窓
口として選手の告発を受け付けたことを記者会見で明かしました。

http://www.asahi.com/sports/update/0206/TKY201302060321.html

15人の選手が、どうして名前を明かさないのかと、批判的な声も
語られています。

「告発した選手15人の実名の公表については「公表しても選手
の不利益にならないと保証されておらず、時期尚早と思う」と山
口香さん。JOCの市原専務理事も「選手を守らなければいけな
いので、実名を公表するつもりはない」と話しています。

●昨日、ちの男女共生ネットのメンバーに対して、次のような問
いかけがありした。

「ちょっと触っても体罰だ、と大騒ぎになってるそうなんです。
どこに線を引いたらいいんでしょう?」

答えは、被害者の訴えの中にあります。被害者の安全が守られた
中で、信頼できるカウンセラーがその声をしっかり聞きとられね
ばなりません。

「大騒ぎ」する人々は、常日頃、体罰、性暴力に対して、自分の
痛みや他者の痛みに想像を及ばせることがないのでしょうか?

●子供たち、女性たち、選手たちの「人権」が尊重されているか
どうか、全国の小中高の学校、大学と、その運動部の指導体制の
中で、見直しなんて、別にいいよ、という集団や組織がはたして
どこにあるでしょう?

出発点は、事件の被害者の人権を重んじることです。被害者の声
にしっかり耳を傾け、その安全を守りながら、「調査委員会」が
調査を進めることです。

このことが徹底されなかったら、腕力を背景に秘めた男性優位社
会が隠然と分泌し続ける、セクハラ、体罰が、この国からなくな
ることはありえないでしょう。


女性の社会的進出が本番を迎えつつある中、女子柔道選手に対す
る暴力事件はその対極ともいえる事件です。
今、この国の社会が、根本的に問われています。


うらおもて・やまねこでした。

2013年2月4日月曜日

女子柔道指導者暴力「指導体制の抜本的な見直し」を15人の女子柔道選手求める



@@@やまねこ通信255@@@

全日本女子柔道指導者暴力問題、「監督一人の辞任では問題は終わ
らない。指導体制の抜本的な見直し」を15人の女子柔道選手求める


スポーツ指導者の暴力に対する断固たる追及が相次いでいる。発端
は大阪市立桜宮高校バスケットボール男子生徒が、顧問から体罰を
受けてから自殺したことだった。

15人の女子柔道選手の告発は、この国の、学校、スポーツ界に許さ
れていた、暴力容認の甘えの構造が、もはや許されないことを知ら
せる警鐘である。

旧い男性優位社会の隠された一面であった暴力と愛の混同。この体
制の、決定的退場が迫られている。

旧軍隊的体制の残存とネオリベラリズムが強制する「成果主義」の
今日的アマルガムについに賞味期限が来た。


●事件の経過:共同通信のまとめ:
ロンドン五輪の柔道に出場した日本代表を含む国内女子トップ選手
15人が、五輪に向けた強化合宿などで園田隆二代表監督(39)やコ
ーチによる暴力やパワーハラスメントがあったと告発する文書を連
名で昨年末に日本オリンピック委員会(JOC)に提出していたこ
とが29日、関係者への取材で分かった。

トップ選手による集団告発は異例。
JOCに加盟する全日本柔道連盟(全柔連)は倫理委員会で園田監
督らに聞き取り調査し、当事者は事実関係を大筋で認めているとい
う。園田監督は取材に対し「今までは自分の考えでやってきたが、
修正する部分は修正していきたい」と話した。

関係者によると、「女子日本代表チームにおける暴力及びパワハラ
について」と題された文書は、練習での平手や竹刀での殴打や暴言、
けがをしている選手への試合出場の強要などを訴え、全柔連に指導
体制の刷新を求めているという。

スポーツ界では大阪市立桜宮高バスケットボール部主将の男子生徒
が、顧問の教員から体罰を受けた後に自殺した。今回の告発は、国
内トップレベルでも暴力が横行する実態を明らかにした。

JOC幹部は29日、文書の提出があったことを認め「アスリートフ
ァースト(選手第一)が基本。正確に事態を把握し、指導者への指
導を徹底したい」と述べた。

ロンドン五輪の女子7階級で、日本は57キロ級の松本薫(25)=フ
ォーリーフジャパン=が優勝したものの金、銀、銅メダル各1個で
北京五輪の成績を大きく下回った。〔共同〕

●女子柔道弁護士が24日会見:
15選手の弁護士が初めて会見し、告発に至った経緯を明かに。

岡村弁護士(15人の女子柔道選手のメッセージ):
15名の行動により、皆様をお騒がせする結果となりますこと、
2020年東京オリンピック招致活動に影響を生じさせていることをお
わびします。

指導の名の下に、指導とは程遠い形で、園田前監督による暴力やハ
ラスメントで、私たちは心身ともに深く傷つきました。人としての
誇りを汚されたことに対し、ある者は涙し、ある者は疲れ果て、ま
た、チームメートが苦しむ姿を見せつけられることで、監督の存在
におびえながら試合や練習をする自分の存在に気づきました。私た
ちの声は、全柔連の内部では聞き入れられることなく、封殺されま
した」

「一人、前監督の責任という形をもって今回の問題解決が図られる
ことは決して、私たちの真意ではありません」「苦しみや悩みの声
を安心して届けられる体制や仕組み作りに生かして頂けることを心
から強く望んでいます」(以上、共同通信)

15人の女子選手たちの求める水準は、この国の男性指導者の水準
より、遥かに高いところにあることが分かる。

全柔連は、最初、園田監督をかばって続投との判断をしたが、世論
の厳しさにようやく気づいて、監督を辞任に追い込んだ。けれど、
全柔連の全体の問題ではなく、園田監督という個人を切る、トカゲ
のしっぽ切りで幕引きする予定だった。

15人の女子選手がこの告発にこぎつけるまでに、どんな苦しみがあ
ったことだろう。「私たちは心身ともに深く傷つきました。人とし
ての誇りを汚された」との訴え。

女子選手たちは、「2020年東京オリンピック招致活動に影響」ある
かもしれないことに対しての、謝罪までしていることが分かる。

この謝罪によって、柔道界では、被害者が声を上げることが許され
なかったことが示される。被害者が声をあげた途端、男性監督コー
チらが「加害者」となり、「暴力事件」が発生する。

スポーツ界であれ、教育界であれ、暴力体罰は、「野蛮状態」の残
存として、文明社会では、あってはならないことであり、スキャン
ダルである。五輪招致など、とんでもないことである。

ところが、高校スポーツであれ、プロ野球であれ、これまで、暴力
を振るう指導者がいることは、公然の秘密であり、「愛のムチ」と
美化されるふしさえあった。

桜宮高校の生徒自殺と、女子柔道選手の告発の二つが、暴力を振る
う指導者の存在を許しているこの国の甘えの体制を、根本的に葬る
きっかけにしなければならない。

●やまねこには、教育現場における暴力について、つらい記憶があ
る。70年代前半のこと、総武線沿線の私立男子高校であった。

職員室の外に生徒を10人ばかり並べて、全員平手打ちをする男性数
学教員がいた。年配の教員たちは軍隊帰りだった。規律に厳しかっ
た。

体格の良い若手の柔道剣道の教員たちの暴力は、軍隊帰りの教員と
は違っていた。生徒とべたべたじゃれていたかと思うと、手を振り
上げる。生徒にタバコを買いにゆかせたりもする。規律も何もない。

教員の周囲に集まる生徒たちは、怯えた眼差しで愛想笑いを浮かべ
おべっかを使っていた。手を上げないとき、「ホントは優しい先生
なんだ」と生徒たちは感謝している。

やまねこはその学校に就職してから、職員会議で毎回訴えた。生徒
に対する体罰・暴力は即座に止めるように。生徒との信頼関係を育
てるのが教師の仕事であって、暴力で押さえつけていたら、ものを
考える習慣が育たず、教育は成立しない。暴力で生徒を矯正するこ
とはできないのだと。

男性教員、所属管理職の教員たちは、表立った反論はしなかった。
会議でのやまねこの発言は、毎回、無視された。

「暴力がよくないことは俺たちだって知ってるよ」
武道の教員たちは呟いて、やまねこが同校の実情を知らないのだと
咎めた。
「ここの生徒たちは口で言っても分からないんだ」。

生徒たちは、実際、「口で言っても分からない」現実の中にいた。
やまねこの授業は、誰も耳を傾けはしなかった。授業の仕方が未熟
だったせいも大いにあっただろうと、今では思う。とはいえ、やま
ねこだけが女子教員で、暴力を使わない教員だった。

教員の連帯が得られないことも同校の問題だった。武道の教員たち
は、同校のOBが多く、経営側の親衛隊でもあった。外から赴任した
若手教員は、どんどん別の職場を求めて退出した。流動の激しい組
の中で、OB教員たちの重さが増して、悪循環が続いていた。

結局、やまねこは、同校併設の女子部の教員たちともに、教員組合
を作った。「教育の質の向上と待遇改善」を要求事項に掲げてから、
同校の勤務条件が格段に変化した。

けれど教育の改善がどれほどであったかはまた別の物語である。
やまねこは成果の確認を待つことなく、2年半の勤務の後、その学校
を辞職した。30歳であった。
38年前の話である。


うらおもて・やまねこでした。