ページビューの合計

2013年2月4日月曜日

女子柔道指導者暴力「指導体制の抜本的な見直し」を15人の女子柔道選手求める



@@@やまねこ通信255@@@

全日本女子柔道指導者暴力問題、「監督一人の辞任では問題は終わ
らない。指導体制の抜本的な見直し」を15人の女子柔道選手求める


スポーツ指導者の暴力に対する断固たる追及が相次いでいる。発端
は大阪市立桜宮高校バスケットボール男子生徒が、顧問から体罰を
受けてから自殺したことだった。

15人の女子柔道選手の告発は、この国の、学校、スポーツ界に許さ
れていた、暴力容認の甘えの構造が、もはや許されないことを知ら
せる警鐘である。

旧い男性優位社会の隠された一面であった暴力と愛の混同。この体
制の、決定的退場が迫られている。

旧軍隊的体制の残存とネオリベラリズムが強制する「成果主義」の
今日的アマルガムについに賞味期限が来た。


●事件の経過:共同通信のまとめ:
ロンドン五輪の柔道に出場した日本代表を含む国内女子トップ選手
15人が、五輪に向けた強化合宿などで園田隆二代表監督(39)やコ
ーチによる暴力やパワーハラスメントがあったと告発する文書を連
名で昨年末に日本オリンピック委員会(JOC)に提出していたこ
とが29日、関係者への取材で分かった。

トップ選手による集団告発は異例。
JOCに加盟する全日本柔道連盟(全柔連)は倫理委員会で園田監
督らに聞き取り調査し、当事者は事実関係を大筋で認めているとい
う。園田監督は取材に対し「今までは自分の考えでやってきたが、
修正する部分は修正していきたい」と話した。

関係者によると、「女子日本代表チームにおける暴力及びパワハラ
について」と題された文書は、練習での平手や竹刀での殴打や暴言、
けがをしている選手への試合出場の強要などを訴え、全柔連に指導
体制の刷新を求めているという。

スポーツ界では大阪市立桜宮高バスケットボール部主将の男子生徒
が、顧問の教員から体罰を受けた後に自殺した。今回の告発は、国
内トップレベルでも暴力が横行する実態を明らかにした。

JOC幹部は29日、文書の提出があったことを認め「アスリートフ
ァースト(選手第一)が基本。正確に事態を把握し、指導者への指
導を徹底したい」と述べた。

ロンドン五輪の女子7階級で、日本は57キロ級の松本薫(25)=フ
ォーリーフジャパン=が優勝したものの金、銀、銅メダル各1個で
北京五輪の成績を大きく下回った。〔共同〕

●女子柔道弁護士が24日会見:
15選手の弁護士が初めて会見し、告発に至った経緯を明かに。

岡村弁護士(15人の女子柔道選手のメッセージ):
15名の行動により、皆様をお騒がせする結果となりますこと、
2020年東京オリンピック招致活動に影響を生じさせていることをお
わびします。

指導の名の下に、指導とは程遠い形で、園田前監督による暴力やハ
ラスメントで、私たちは心身ともに深く傷つきました。人としての
誇りを汚されたことに対し、ある者は涙し、ある者は疲れ果て、ま
た、チームメートが苦しむ姿を見せつけられることで、監督の存在
におびえながら試合や練習をする自分の存在に気づきました。私た
ちの声は、全柔連の内部では聞き入れられることなく、封殺されま
した」

「一人、前監督の責任という形をもって今回の問題解決が図られる
ことは決して、私たちの真意ではありません」「苦しみや悩みの声
を安心して届けられる体制や仕組み作りに生かして頂けることを心
から強く望んでいます」(以上、共同通信)

15人の女子選手たちの求める水準は、この国の男性指導者の水準
より、遥かに高いところにあることが分かる。

全柔連は、最初、園田監督をかばって続投との判断をしたが、世論
の厳しさにようやく気づいて、監督を辞任に追い込んだ。けれど、
全柔連の全体の問題ではなく、園田監督という個人を切る、トカゲ
のしっぽ切りで幕引きする予定だった。

15人の女子選手がこの告発にこぎつけるまでに、どんな苦しみがあ
ったことだろう。「私たちは心身ともに深く傷つきました。人とし
ての誇りを汚された」との訴え。

女子選手たちは、「2020年東京オリンピック招致活動に影響」ある
かもしれないことに対しての、謝罪までしていることが分かる。

この謝罪によって、柔道界では、被害者が声を上げることが許され
なかったことが示される。被害者が声をあげた途端、男性監督コー
チらが「加害者」となり、「暴力事件」が発生する。

スポーツ界であれ、教育界であれ、暴力体罰は、「野蛮状態」の残
存として、文明社会では、あってはならないことであり、スキャン
ダルである。五輪招致など、とんでもないことである。

ところが、高校スポーツであれ、プロ野球であれ、これまで、暴力
を振るう指導者がいることは、公然の秘密であり、「愛のムチ」と
美化されるふしさえあった。

桜宮高校の生徒自殺と、女子柔道選手の告発の二つが、暴力を振る
う指導者の存在を許しているこの国の甘えの体制を、根本的に葬る
きっかけにしなければならない。

●やまねこには、教育現場における暴力について、つらい記憶があ
る。70年代前半のこと、総武線沿線の私立男子高校であった。

職員室の外に生徒を10人ばかり並べて、全員平手打ちをする男性数
学教員がいた。年配の教員たちは軍隊帰りだった。規律に厳しかっ
た。

体格の良い若手の柔道剣道の教員たちの暴力は、軍隊帰りの教員と
は違っていた。生徒とべたべたじゃれていたかと思うと、手を振り
上げる。生徒にタバコを買いにゆかせたりもする。規律も何もない。

教員の周囲に集まる生徒たちは、怯えた眼差しで愛想笑いを浮かべ
おべっかを使っていた。手を上げないとき、「ホントは優しい先生
なんだ」と生徒たちは感謝している。

やまねこはその学校に就職してから、職員会議で毎回訴えた。生徒
に対する体罰・暴力は即座に止めるように。生徒との信頼関係を育
てるのが教師の仕事であって、暴力で押さえつけていたら、ものを
考える習慣が育たず、教育は成立しない。暴力で生徒を矯正するこ
とはできないのだと。

男性教員、所属管理職の教員たちは、表立った反論はしなかった。
会議でのやまねこの発言は、毎回、無視された。

「暴力がよくないことは俺たちだって知ってるよ」
武道の教員たちは呟いて、やまねこが同校の実情を知らないのだと
咎めた。
「ここの生徒たちは口で言っても分からないんだ」。

生徒たちは、実際、「口で言っても分からない」現実の中にいた。
やまねこの授業は、誰も耳を傾けはしなかった。授業の仕方が未熟
だったせいも大いにあっただろうと、今では思う。とはいえ、やま
ねこだけが女子教員で、暴力を使わない教員だった。

教員の連帯が得られないことも同校の問題だった。武道の教員たち
は、同校のOBが多く、経営側の親衛隊でもあった。外から赴任した
若手教員は、どんどん別の職場を求めて退出した。流動の激しい組
の中で、OB教員たちの重さが増して、悪循環が続いていた。

結局、やまねこは、同校併設の女子部の教員たちともに、教員組合
を作った。「教育の質の向上と待遇改善」を要求事項に掲げてから、
同校の勤務条件が格段に変化した。

けれど教育の改善がどれほどであったかはまた別の物語である。
やまねこは成果の確認を待つことなく、2年半の勤務の後、その学校
を辞職した。30歳であった。
38年前の話である。


うらおもて・やまねこでした。


2 件のコメント:

  1. 有賀ゆかり2013年2月5日 9:16

    柔道関係者の行動・コメントはDV加害者と全く同じ思考回路だと慄然としています。
    この恐怖状態の中で声を上げた皆さんの強さ・覚悟はただ事ではないと思います。それをいかさなくては。

    返信削除
  2. 有賀ゆかりさま
    コメントありがとうございます。
    柔道関係者の行動が、DV加害者と同じ。被害者たちの行動もDV被害者たちの行動に似ていることについて、同感です。
    これを何とか生かさなくては。
    表向きの取締が強まると、隠蔽される懸念があります。
    社会に生きるあらゆる人々の、暴力に対する意識が変わらなくては。

    返信削除