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2013年4月19日金曜日

やまねこ通信265号 「失敗、思い違いから読むシェイクスピア!」


@@@やまねこ通信265号@@@

「失敗、思い違いから読むシェイクスピア!」

二階住人と「喧嘩」すると疲労する。
むしろ、人がどのように失敗するかをじっくり観察した
らどうだろう?「失敗」の責任を、誰がどうやって取る
だろう?

題して、「失敗、思い違いから読むシェイクスピア!」
最初の作品は、『ロミオとジュリエット』である。憎し
み合う二つの家の息子と娘が愛し合うようになり、つい
には悲劇的結末に・・・

この物語は広く知られている。『ロミオとジュリエット』
は芝居であり「絵空事」である。けれど、殺人の理由、切
掛がしっかり追及され、厳しい処罰が責任者に課されてい
る。

娯楽を見る観客のように、起こった出来事を「上」から目
線で「失敗」だったと裁くのではない。

授業ではむしろ、「失敗」の過程を水平の目線で綿密に観
察してゆく。どうしたらよかったかを、真剣に考える。「
失敗」の責任を誰が取るだろう。責任を取らない人物はい
ないだろうか?どうしてその人物は責任を取らないのだろ
う?取れないのだろう?このことを分析してゆく。

『ロミオとジュリエット』における「間違い」「失敗」:
二つの家の抗争、マーキューシオ殺し、ロミオのティボル
ト殺し、ロミオとジュリエットの秘密結婚、ロミオの流刑
地マンチュアからの脱出、パリス殺し、ロミオの毒薬飲み、
ジュリエット自死、事件の発覚と大公の結語。

授業では、これらの事件を丹念に追求してゆく。
『ロミオとジュリエット』の映画で、今日入手しやすいも
のが二つある。

●『ロミオとジュリエット』監督:フランコ・ゼッフェレ
ッリ、パラマウント映画、1968
 キャスト:ジュリエット:オリヴィア・ハッセイ、ロミオ
:レナード・ホワイティング

・フランコ・ゼッフェレッリ監督はオペラ演出家として有名。
イタリアの町でロケし、ルネッサン時代のヴェローナはこう
だったのではないかと思わせるような舞台背景、衣装を再現
している。また主人公ロミオ、ジュリエットが登場するとき、
それぞれのテーマ音楽を流すことでオペラ的効果を高めている。

●『ロミオとジュリエット』監督:バズ・ラーマン、20th
ォックス映画、1996
キャスト:ジュリエット:クレア・デーンズ、ロミオ:レオ
ナルド・デカプリオ

・現代の米国社会を背景においている。銃社会、車社会。警
察ヘリコプター。両家の抗争を裁く立場の大公は、黒人の警
察署長。マーキューシオは女装の黒人ダンサー。「街路」は
海水浴場の浜辺。ロレンスは、アメリカ先住民の風貌に近く、
文明社会以前の未開の魔術、薬物に詳しい。

バズ・ラーマン監督:1962年オーストラリア生まれ。オース
トラリア国立演劇学院で学ぶ。舞台演出家でもあり、オペラ
『ラ・ボエーム』を演出してトニー賞にノミネートされた。
『ロミオとジュリエット』で英国アカデミー賞受賞。

●4月8日(月)一回目の授業では、二つの映画を15分ず
つ試写した。どちらが、学生に受けるだろうか?
ロック・パンクのバズ・ラーマン版ではなく、思いがけずフ
ランコ・ゼッフェレッリ版を、85人中、65人の受講生が
選んだ。

歴史的背景、古典的で落ち着いたトーン、美しく甘い音楽の
ゼッフェレッリ版。

けれど、授業ではロック・パンクのバズ・ラーマン版を使用
することに。ゼッフェレッリ版が見たい者たちは、図書館や
TSUTAYAで借り出して、比較研究の材料にするといいだろう。

●こうして、4月15日(月)2回目の授業では、バズ・ラ
ーマン版で第2幕第2場まで進んだ。ジュリエットの家の仮
面舞踏会で出会った二人。互いに相手が敵方の家であること
を知る。

舞踏会の後、ロミオはジュリエットの家キャピュレット家の
屋敷に忍び込む。<バルコニーの場>である。

ジュリエット「おお、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロ
ミオなの?お父様と縁を切り、ロミオという名をおすてにな
って。私の敵といっても、それはあなたのお名前だけ。モン
タギューの名をすてても、あなたはあなた。名前ってなに?
バラと呼んでる花を別の名前にしてみても美しい香りはその
まま。」

このようなセリフが交わされる映画を夢中で鑑賞する学生た
ち。短いリポートを書き終わって、100人ほどの頬を紅潮
させた彼ら彼女らが退席する。

「どお?面白かった?」

「うん!」

深くうなずく顔、顔、顔!

眼が輝いている。

これが、やまねこの幸福の瞬間である。



うらおもて・やまねこ


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