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2013年5月4日土曜日

やまねこ通信270号 春の大鹿歌舞伎、DVありイクメンあり、飛び交う掛け声に乱舞するおひねり


@@@やまねこ通信270号@@@
  
伊那谷の奥の奥、大鹿村に行ってきた。
約三百年前から伝承される「大鹿歌舞伎」(国選択無形
民俗文化財)の春季定期公演が3日に行われた。会場は
大河原の大磧(たいせき)神社舞台。

●やまねこたちは、席を予約し、舞台から8列目の席に陣
取った。前夜は、山塩館に宿泊し、美味佳肴に舌づつみ
を打った。塩味するお湯の温泉にも漬かった。

富士見在住の友人が同乗して、茅野から杖突峠に登り、
高遠に入り、長谷村へ。そこから一車線しかない崖っぷち
のくねくねした国道を40分。山の奥のまた奥に入ったと
ころが大鹿村。このドライブが大いに報われた二日でした。

●中日新聞のウェブ版を見ると、県内外から千五百人のフ
ァンが集まったという。

村民が役者や義太夫を演じ、観客は弁当を食べながら声援
を送り、和気あいあいと見るのが特色。演目は「奥州安達
原 宗任物語の段」「神霊矢口渡 八郎物語の段」で、役
者が見えを切るたびにおひねりが飛び交い、観客も一緒に
舞台を盛り上げた。(以上引用)

●二つの演目がなかなか面白かった。「イクメン」あり、
夫の妻に対するDVあり・・・

「奥州安達原 宗任物語の段」では、善知鳥文治安方(う
とうぶんじやすかた)が、主君安倍貞任の子千代童を奥州
外が浜で妻お谷とともに育てている。

ところが生活苦のため金貸し南兵衛から借金し、あまつさ
え禁制の鶴を殺して金札を盗む。鶴殺しの犯人探しに報奨
金が与えられることを知った文治安方は、下手人を奉行所
に届けて報奨金を手にしようとの目論見。

その際、自ら自首の手紙をしたため、<無筆>の妻に奉行
所へ届けさせる。

文字が読めない妻が、良かれと思って、夫の手紙を届けた
ところ、結果、代官が夫を捕えにやってくる。このことが
劇的アイロニー。結果、主君の大切な忘れ形見千代堂は、
ショックで死んでしまう。

ところがドラマはそこから展開。そこに現れた金貸し南兵
衛が、実は自分は宗任であると打ち明ける。南兵衛は鶴殺
しの真犯人は自分だと名乗りを上げ、お縄を受ける。彼は
文治の代わりに都へ引かれてゆき、兄を殺した憎っき八幡
太郎義家と対決する計画であった。

●主君の遺児の子育てをして、一家再興を目論む忠義物。
文字が読めない妻が脇役を務めるところが見せ場の悲しい
物語。最後には、再興の願いが弟宗任に託される。

●「神霊矢口渡 八郎物語の段」。時は南北朝、南朝側の
大将新田義興の城。義興の軍勢が幸先良いスタートを切っ
たため、城内はお祝いムード。
義興の妻御台、若君徳寿丸、由良兵庫助の妻湊、家老六郎
が祝祭の最中。

そこに兵庫が暗い顔で戻る。義興の無謀をいさめて勘当の
憂き目に会った。やがて義興は負け戦の中で戦死。この知
らせを持ってきた戦士八郎も息絶える。

主を失ったこの館に敵の軍勢が押し寄せるとの知らせ。兵
庫は降参の覚悟。しかし妻の湊は御台を守ろうとする。
怒った兵庫は妻を殴り紐で縛り付ける。妻は摩擦熱で縄を
断ち切る。ここのところで、エレキテルの科学者・平賀源
内原作の面目躍如!

敵の大将竹澤監物が軍勢とともに乗り込む。兵庫は降参、
しかし妻の湊は薙刀で応戦し御台とともに落ちのびる。六
郎は若君徳壽丸を抱いて敵を倒して進んで行った。

●面白いことに、主君の妻であり母である御台と湊では
く、六郎がイクメン(イケメンではない。「イクメ
ン」は育児する男性のこと)よろしく、子連れ狼、赤
城の子守唄の先駆として、主君の子供を抱えて落ち延
びたのだ。

子「宝」を守る「家」中心の男性たちの忠義物語。この中
で、母ならぬ家臣の男性が子どもを預かる物語であった。

さらに面白いのは、早々に降参した臆病者の兵庫は、妻に
ばかりは強気に出て、弱気を戒める妻湊を殴る蹴る、挙句
には縄で柱に縛り付ける乱暴狼藉のDV現行犯!

●「DVやめろ!」「湊がんばれ~」「ゆみちゃ~頑張れ~」
観客席から、夫をたしなめ非難する湊、その役者のゆみち
ゃを応援する歓声が鳴り止まなかった。


追記:同行者富士見町在住の友人が追記を所望:
「湊役のゆみちゃんは、映画「大鹿村騒動記」の舞台、
「ディア・イーター」店のおかみ」ゆうこと付記せよ
との思し召し!
次回はぜひとも訪問せねば。

古い歌舞伎の台本を、今日の観客がどのように受け止める
か!このことが、観客の掛け声に示されるのだ。舞台と観
客席の両方の掛け合い、キャッチボールで、芝居が成り立
つのである。
 
大鹿歌舞伎では、掛け声が楽しかった。誰が掛けてもいい。
歌舞伎座では、権威のかおりが立ち込めるから、なかなか
こうは行かない。大鹿歌舞伎では、村芝居の面白さがあり
ったけ楽しめた。

お金を包んだおひねりが、あられのように乱れ飛んだ。
五つも六つも一人で投げる人あり、役者の頭に当たったり。

寄付金の受け入れは、紙に毛筆で書いて張り出されている。
金壱千圓から壱萬圓まで、多数の貼り紙が風になびいて活
況を呈していました。

伊那谷の奥の素晴らしい文化伝承の地、大鹿村を初めて訪
問。塩水の湧き出す土地、大鹿村の歴史が知りたくなりました。

大鹿歌舞伎保存会の皆様、大鹿村の皆様本当にお疲れ様で
した。


うらおもて・やまねこでした。



 

1 件のコメント:

  1. やまねこの活写にワクワクしました。ワシも行きてー

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