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2013年8月20日火曜日

やまねこ通信278号:参院選後の「冬の時代」をどう生きるか?斎藤美奈子氏講演会

やまねこ通信278号

参院選後の「冬の時代」をどう生きるか?斎藤美奈子氏講演会

斎藤美奈子氏講演会のお知らせブログから一ヶ月以上がた
ちました。

参院選挙の前日、7月20日の茅野は晴天でした。
11時ころから、ちの男女共生ネットの頼もしいメンバーが
集まりました。

駐車場案内をアルバイト学生に依頼、会場設営、プロジェ
クター準備、講師控室、託児室準備、会場にテーブルを並
べて受付3列。別のテーブルではフィリッピン女性の人権を
守るブックロードのバッグを販売。

養護施設ひまわり作業所のクッキー、財布などの袋物がに
並ぶ。
今井書店のしほさんが著者サイン会の本をテーブルに並べ
ている。

時計の針が12時に近づく。新宿発あずさ号が到着する時刻
だ。たかこさんとちづこさんが車でお迎えに。まもなく到
着した講師はテーブルの位置、プロジェクターの写り具合
を確認して控え室に。

われわれスタッフは茅野名物、おいしい屋さんの有機野菜
料理の弁当を囲む。

するうちに参加者がちらほら。
運営委員が中心となり、準備会を重ねてかゆいところに手
の届く段取りが、しっかり組み立てられていた。

この過程を、やまねこは松葉杖の身体障害者として、すべ
て椅子に腰を下ろして眺めさせてもらった。

1時半、司会の声が響く。会場にはいつの間にか60人を超
える参加者が。知り合いも多いけれど、初対面の方々も多
い。

●やまねこの仲間ちの男女共生ネットが、文芸評論家斎藤
美奈子さんをお迎えして講演会を開く。

斎藤美奈子は、ジェンダーの切り口から権力者のウソを鋭
くえぐり出すことにおいて、ピカ一の論客である。女たち
の生き方が日本近代文学にどのように描かれているかを分
析し、目からウロコ、抱腹絶倒の書物をこれまでに多数出
版している。

ジェンダーの視点で社会を眺め、分析したら、どれほど面
白い光景が展開するだろう!

このことの実践者として最も先鋭で刺激的、イキの良い論
者として、やまねこの念頭にあったのが、斎藤美奈子さん
であった。

ここに至るまでに、昨年来の前段階があった。『モダンガ
ール論』文春文庫のあとがきに、著者の恩師成城大学経済
学部の教授が解説を書いていた。

経済学部の学生だった斎藤美奈子は、丸岡秀子の『日本農
村婦人問題』を読むことで、日本近代経済史、日本近代史
研究の海に漕ぎ出した。

ちの男女共生ネットは、丸岡秀子をロールモデルに選んで
いる。丸岡秀子は茅野から蓼科山を越えたところにある佐
久地方臼田の生まれ育ちである。

やまねこはこれを奇貨とし、ちの男女共生ネットの活動を
紹介しかたがた、斎藤美奈子氏に講演依頼の手紙を書いた。
斎藤氏はわれわれの活動に関心を示して、市場価格のン分
の1の謝礼で、講演を引き受けてくださった。
最初の依頼から約一年後に、この日の講演会が実現したの
だった。

参院選の前日。ホットな話題が目白押し。

日本はこれからどうなるの!
    ~改憲時代の政治と女性~

次に、当日のレジュメをもとに、三つのテーマをやまねこ
流に簡潔に紹介します。

[テーマ1] 学校とスポーツ界の「体罰」問題
 学校の体罰に関する全国調査によると、体罰に対する考
えは男女で大きく違う。

全体では「暴力は一切認めるべきでない」が53%、「一
定の範囲で認めてもよい」42%である。
ところが、体罰を「認めるべきでない」「体罰を認めても
よい」の考えでは、
男性:43%、54%に対し、女性:62%、32%。
 男性の半数以上は体罰容認派だが、女性の容認派は反対
派の半数である。

軍隊式の教育が戦後、学校に持ち帰られたこと、支配・被
支配の関係が身についている。日本は暴力に甘い国などが
体罰容認の背景をなしている。

暴力を禁止した法律、児童虐待防止法、DV防止法などがす
でに存在することを踏まえ、戦後日本が放置してきた体罰
について考える切っ掛けにしよう。

[テーマ2]橋下徹「慰安婦は必要」発言をめぐっての橋
下発言の骨子は、1 軍の強制はなかった。 2慰安婦は
必要だった。 3 風俗業を活用せよの3点である。

問題点は次のとおりである。
1人権意識の欠如、2女性蔑視、3男性蔑視、4歴史認識
の欠落 5韓国への冒涜 6沖縄への冒涜 

日本政府はすでに1993年河野談話(宮沢内閣)で「お詫び
と反省の気持ち」を言明し、1995年村山談話は「植民地支
配と侵略によってアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を
与えた。
この歴史的事実を謙虚に受け止め、「反省とお詫びの気持
ちを表明」している。

ところが「強制はなかった派」の主張が、強制したのは軍
ではなく業者である、慰安婦は「商行為」だったとかたり、
追随する者たちがいる。

背景にあるのは、買売春に対する日本と国際常識のズレで
あり、買春に甘い風土が日本にある。80年代には買春ツ
アーが堂々と行われ、国連人権センターから「何とかしろ」
と批判をうけている。

日本社会はこのようにして、買春に甘い風土なのである。

[テーマ3] 安倍政権の「女性政策」を考える

安倍政権の政策
アベノミクス:再配分より経済成長
原発の再稼働:「原発ゼロ」はリセット
TPP交渉参加:1次産業と医療が崩壊
改憲への道:国のかたちが変わる

主な女性政策
育児休暇3年制度:これは安倍首相のこだわりで、むしろ
職場復帰を妨げる
成長戦略は女性:キャリア女性しか念頭にない
「女性手帳」で少子化解消:性教育をやればいいのに、
安倍氏はむしろ性教育をつぶす役割を果たしてきた。

ジェンダー平等政策が政策に取り込まれている度合いは、
社民党52点満点、共産党50点、民主党44点、公明党38点、
自民党11点、維新の会9点であった。

●以上の、予定されたテーマが終わると、斎藤美奈子さ
んは、憲法について情熱的に語り始めた。

自民党改憲草案のポイントは、
1 国民主権が危ない
2 基本的人権が危ない
3 平和主義が危ない

条文を踏まえながらの自民党の改憲案に対する根本的批
判をする。

●翌日にせまった参院選の結果は、斎藤さんが予測した
通りであった。東京地方区で山本太郎が当選したのはよ
かったが。

斎藤氏は次の衆院選までの4年間を、「冬の時代」と呼ん
だ。
すでに「改憲時代」である。
自民党の改憲案では、国防軍は三権分立の外にたつ第4
の権力となってしまう。

現在の最大の問題は、憲法を、私たち国民がろくに読ん
でいないことである。

その時代を、わたしたちはどうやって過ごしたらいいの
だろう?

1    日常生活で憲法のことを話題にする。周囲の人が乗っ
 てこなくてもいい。飽きないで語り続けよう。
2    議員、自治体に対して、様々な問題で圧力をかけよう。
3    活動においては100%を求めない。
4    暗くならないようにしよう。

●選挙結果は、斎藤さんの予測通りであった。
「改憲時代」。
これからの4年をどうしたらいいだろう?

会場からの質問に答えて、身の回りの無関心な男性たちを、
どうやって切り崩したらいいかのアイディアを、彼女は伝
えた。あいうえおの5項目である。

あ:「あれ~」と声をあげて、「あきれるてみせる」。
い:「怒る」ふりをする。
う:「う~ん」と「うなり」、声にならない叫びを発する。
え:「えっ!」と聞き返す。
お:「オウム返し」に相手の言葉を繰り返す。

そのとおり。
黙っていてはいけない。
かといって、議論してもなかなか相手に通じない。
だから、「あんたの言い分は、呑めないよ!」
「それって、おかしいよ!」
と常に伝えてゆく必要がある。
その技法が「あいうえお」なのだ。

以上、斎藤美奈子氏の講演を、レジュメを参考にして、や
まねこ風に紹介しました。

シリアスな問題が山積みで、重くなりがちな講演にもかか
わらず、美奈子節の炸裂に応え、会場は時に、抱腹絶倒の
笑いが渦巻いて、「美奈子ちゃ~ん」との掛け声も投げら
れました。

サイン会も盛況、ブックロードのバッグも大いに売れて、
新規の会員もあり、ちの男女共生ネットのメンバーは、わ
くわく、ほくほくの一日だったのです。

講演の斎藤美奈子さん、新しい参加者のみなさん、リピー
ターのみなさん、チケット販売会場設営などのすべてを担
当した拡大運営委員のみなさん、本当にありがとうござい
ました。


長い夏休み中の、
うらおもて・やまねこでした。