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2015年9月6日日曜日

やまねこ通信338号:諏訪でうまい蕎麦屋は

@@@やまねこ通信338号@@@

諏訪でうまい蕎麦屋は

諏訪地方で暮らすようになって、美味しい蕎麦が時々食べ
たくなる。蕎麦屋の地図を地域の知人が作成したのをもら
って、友人に配っていた。地図を見ながら幾つも食べ歩き、
松竹梅の評価をした。10年ばかり前のことだ。

忘れがたい店のひとつは、河内屋という蕎麦屋である。諏
訪駅前にあった。過去形である。閉店して何年かたつ。上
諏訪駅の湖側、湖明館通りに入ってすぐの右側に店があっ
た。駅から3、4分の距離。駅前の便利さのため、かつて
は客足に切れ目がなかっただろう。店のカウンターの上を
見上げると、永六輔などの色紙が何枚も、年代の色をにじ
ませて並んでいるのが目に付いた。

蕎麦はうすい緑色がかっていた。茹で上がった蕎麦をテー
ブルに運ぶとき店主は言った。
「最初はつゆを付けずに味わってください。甘~い味がし
ますから」。

その通りだった。甘い味がした。
茹で時間は7秒と聞いた。味わいながら耳を傾けるうち、
店主は語った。

「このころは駐車場さえ大きければ客が入りますからね。味
でも何でもない。ひどいもんですよ」
やまねこは、幾度もうなずきながら蕎麦をすすった。

河内屋でそばを食べるとき、店主は欠かさず駐車場の恨み
を語った。
河内屋の駐車場は、店の裏手にあるビル一階の2、3台分
だった。河内屋で食べるときは、駐車場が空いてるかどう
か、はらしたものだ。駅前の便利さがが、車社会になって
裏目に出た。

蕎麦をこねる毎日の労働の負担で腕が腱鞘炎になって痛む
ことを店主はかこっていた。

残念だね。店じまいが近いのだろうか。その前にできるだ
け通わなくては。やまねこはこんなことを友人と語り合っ
た。そばを味わうのもさることながら、寂れた駅前商店街
を少しでも長生きさせたいという思い。いや、諏訪の温泉
街の古い賑わいへの郷愁があったのかもしれない。

付近の協立珈琲でコーヒー豆を煎って挽いてもらうことも
できる。だから友人を誘って通ったのは5、6年前のこと
だ。

ところが3年前だったか、蕎麦を食べようと店の前にゆく
と、白い紙がぺたりガラスの扉にはりついていた。閉店し
たのだ。

上諏訪駅前が車社会になって何年たったのだろう。40年
以上は経っていると思う。その間、河内屋店主はずっと語
り続けたのだろう。
「このころは駐車場さえ大きければ客が入りますから。味
でも何でもない。ひどいもんですよ」

けれど、車があるからこそ、茅野の山麓に暮らすやまねこ
たちが、20キロばかり離れた上諏訪駅前まで気軽に蕎麦
を食べに行くことができたのだ。どんなにうまい蕎麦屋で
も、車を停める場所がなかったら、味わうすべがないのだ。

▲駐車場が大きいばかりの店もある。ビーナスライン沿い
のリゾート地では、シーズンになれば他府県ナンバーの車
で、どの蕎麦屋の駐車場も車で埋め尽くされる。
けれどシーズンオフにはうまい店とそうでない店の差が明
らかになる。

▲今時、客足の途切れない蕎麦屋は、駐車場が無理なく止
められて、ざる蕎麦が名物の店である。蕎麦だけを出す禁
欲的な店が多い。この種類の店は、冬場はいざ知らず、ど
んなに遠い場所でも山の中でも構わないというお客が足を
運ぶ。

蓼科ヴィレッジの入口付近のしもさか、黙坊、ビーナスラ
インの蓼山亭、それに諏訪市の籠屋がこれにあたる。

もう一方は、そばがしっかりうまい上に、定食のようなセ
ットメニューが豊富で、ランチタイムが賑やかになる蕎麦
屋である。メニューが季節によって変化するのが楽しみな
お客がリピーターになる。ビーナスラインの長寿更科、ち
の駅前の更科。
それに定食というより、やや懐石料理風の富士見の季楽庵、
岡谷のあきしのがこれにあたる。この種類の蕎麦屋は、年
中を通じて客足が絶えない。

これから是非とも行ってみたい蕎麦屋は上諏訪駅前の小坂。
構えが昔の旅籠みたいで、うまいとの評判を何度も聞いて
いる。それからインターネットで評判との噂があるビーナ
スラインの六方庵風林である。

多数ある蕎麦屋さんの中で、ほんのわずかのお店のお話を
しました。

近々、新そばのシーズンが始まる。




うらおもて・やまねこでした。



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